引っ越しの電気・ガスの手続きについて、よく「1週間前までに」と言われます。ただ、これは各社が定めた期限ではありません。実際に公表されている条件を調べると、東京電力のWEB申込は「当日〜31日先まで」しか受け付けていません。つまり1か月以上前には申し込めない一方、直前でも間に合う場合があるということです。この記事では、公式に確認できる条件をもとに、いつ何をすればいいのかを整理しました。
※本記事の条件は2026年9月時点の東京電力エナジーパートナー・東京ガスの公式サイトの表記に基づきます。他地域の事業者は条件が異なります。
実際に受け付けている期間
電気(東京電力エナジーパートナー)
公式サポートページには、こう書かれています。
「原則、当日〜31日間までのお申込みを承っております」
つまりWEBからの申し込みには上限があります。引っ越しが2か月先に決まっていても、その時点ではWEBで申し込めません。申込可能期間より前に手続きしたい場合は、カスタマーセンターへ電話する必要があります。
「できるだけ早く」という一般的なアドバイスは、この点で正確ではありません。正しくは「引っ越し日の31日前になったら、すぐ申し込む」です。カレンダーに入れておくならこの日です。
なお、同じページには「お申込み内容、設備の供給状況等により、受付可能な日程が異なります。当日や翌日など一部お申込みいただけない場合があります」とも書かれています。年末年始は受付可能日が変わることもあります。
ガス(東京ガス)
東京ガスは「何日前まで」という一律の期限を公表していません。代わりに、申込フォームで手続き種別を選ぶと、その時点での最短日時が表示される方式です。公式には次のように案内されています。
「お客さまの建物状況や時期等によって異なる場合がございます」
スピード感としては、ガス使用開始は朝7:30までの申し込みで最短当日午後の訪問が可能とされています。ただし同時に「直前にご連絡をいただいても、ご希望の時間帯の作業に伺えない場合がございます」という注意書きもあります。
まとめると、ガスは「間に合うかどうか」ではなく「希望の時間帯が取れるかどうか」の勝負です。日程そのものより、荷物の搬入と重ならない時間帯を押さえられるかが問題になります。
手続きの順番
- 引っ越し日の31日前になったら、ガスの開栓予約を最初に取る:立会いが必要なのはガスだけなので、ここが日程の軸になります。希望の時間帯から埋まっていきます。
- 同じタイミングで電気の使用開始を申し込む:立会い不要なので、開始日を指定するだけです。
- 旧居の使用停止を申し込む:電気・ガス・水道とも、退去日に合わせて停止日を指定します。同じ事業者のエリア内での引っ越しなら、停止と開始をまとめて1回で手続きできることがあります。
- 水道の開始・停止を申し込む:自治体の水道局が窓口です。立会いは原則不要です。
ガスの立会いだけは避けられません。当日の段取りの組み方は、こちらにまとめています。
申し込みに必要なもの
手続きの前に、これだけ手元に用意しておくとスムーズです。
- お客様番号:検針票かマイページに記載されています。旧居の停止手続きで使います。
- 供給地点特定番号:電気の契約を特定する番号で、検針票やマイページで確認できます。新居で電力会社を新しく選ぶ場合に必要になることがあります。
- 新居の正確な住所と部屋番号:建物名の表記ゆれで手続きが止まることがあります。契約書どおりに入力してください。
- 入居日と退去日:鍵の引き渡し日と、荷物の搬出が終わる日です。
検針票を捨ててしまっている場合でも、マイページやアプリから確認できます。旧居の契約先が分からないなら、まず建物の管理会社に聞くのが早いです。
旧居の停止を忘れると、いくら損するか
ありがちな失敗が、新居の手続きだけして旧居の停止を忘れることです。ここで効いてくるのが基本料金です。
基本料金は契約アンペアで決まる固定費で、電気を1kWhも使っていなくてもかかります。東京電力の従量電灯Bなら、30A契約で月935円25銭。誰も住んでいない部屋に、毎月これだけ払い続けることになります。
ガスにも同様に基本料金があります。気づくのが3か月後なら、電気だけで2,800円前後の無駄です。退去日が決まった時点で、停止手続きもセットで済ませてください。
電気料金の内訳と基本料金の仕組みについては、こちらで詳しく分解しています。
セット割は「固定額」か「率」かで選ぶ
新居で契約先を選ぶとき、電気とガスをまとめるセット割が候補になります。ここで見るべきは割引額そのものではなく、割引の計算方法です。大きく2種類あります。
- 固定額割引:毎月◯◯円引き。使用量に関係なく一定。
- 率での割引:料金の◯%引き。使うほど割引額が大きくなる。
どちらが得かは、自分の使用量で決まります。損益分岐は簡単に計算できます。
仮に「月100円の固定割引」と「0.5%の割引」を比べるなら、
100円 ÷ 0.005 = 20,000円
つまり電気とガスの合計が月20,000円を超えて初めて、0.5%割引が100円固定に勝ちます。
では一人暮らしはいくらなのか。総務省の家計調査(2025年・単身世帯)では、電気代が月7,337円、ガス代が月2,999円。合計10,336円です。これに0.5%をかけると約52円。固定100円割引の方が月48円、年間576円多く得をする計算になります。
なお、ここで使ったガス代の平均2,999円は都市ガスとプロパンガスを混ぜた数字です。新居がプロパンだと、同じ熱量でも支払いは約2倍になります。契約先を決める前に、物件情報の「ガス」欄を確認してください。差額は年間で約31,000円になります。詳しくは一人暮らしのガス代は月いくら?にまとめました。
金額としては小さいですが、方向性ははっきりしています。一人暮らしの使用量では、率での割引はほとんど効きません。候補のプランがどちらの方式かを確認して、固定額割引を優先する——これだけで判断がつきます。
逆に、在宅時間が長くて光熱費が月2万円を超えるなら、率での割引が有利になります。自分の請求額を見てから決めてください。
繁忙期は何が起きるか
3〜4月は引っ越しが集中します。ここで詰まるのは電気の手続きではなく、ガスの開栓の予約枠です。電気は立会いが不要なので人手の制約を受けませんが、ガスは作業員が訪問するため、1日に対応できる件数に上限があります。
繁忙期に入居するなら、31日前の申込解禁日に真っ先にガスを押さえるのが唯一の対策です。それでも希望の時間帯が取れない場合は、開栓日を入居翌日にして、初日はお湯を使わない前提で動く方が現実的なこともあります。
業者選びの段階なら、キャンセル料のルールを先に知っておくと日程を組みやすくなります。標準引越運送約款では、引っ越し日の3日前より早ければ解約手数料はかかりません。
→ 一人暮らしの引っ越し業者の選び方|キャンセル料は約款で決まっている
よくある質問
Q. 引っ越しの何日前までに手続きすればいいですか?
A. 東京電力のWEB申込は「当日〜31日間まで」なので、31日前になったら申し込むのが正解です。それより前はWEBで申し込めません(電話は可)。ガスは一律の期限がなく、申込フォームで最短日時が表示される方式です。ただし直前だと希望の時間帯が取れないことがあるため、日程が決まり次第の予約をおすすめします。
Q. 入居初日からお湯を使いたいのですが、可能ですか?
A. ガスの開栓が済んでいれば可能です。東京ガスは朝7:30までの申し込みで最短当日午後の訪問が可能としていますが、これは枠が空いていればの話です。初日の午前中に開栓を設定できると、搬入前に給湯が使える状態になります。
Q. 電気とガスは同じ会社にまとめた方がいいですか?
A. 必須ではありません。セット割が使えるなら固定費を抑えられますが、一人暮らしの使用量では率での割引はほとんど効きません(電気+ガスで月1万円程度のため、0.5%なら約52円)。固定額割引のプランかどうかを確認してから判断してください。
Q. 引っ越し先が決まっていなくても準備できますか?
A. 住所が確定していないと申し込めません。ただし旧居の停止手続きは退去日が決まれば進められます。また、新居で契約したい電力会社を先に決めておけば、住所が確定した時点ですぐ動けます。
チェックリスト
- 引っ越し日の31日前をカレンダーに入れた
- その日にガスの開栓予約を取った(時間帯も指定した)
- 電気の使用開始を申し込んだ
- 旧居の電気・ガス・水道の停止を申し込んだ
- お客様番号と供給地点特定番号を控えた
- セット割が固定額か率かを確認した
繁忙期(3月〜4月)は各社の受付が混み合い、連絡も取りにくくなります。時期ごとの混み方は引っ越しの繁忙期はいつ?3月は通常月の約2倍という国交省データにまとめました。
まとめ
- 「1週間前まで」は各社の規定ではない。東京電力のWEB申込は当日〜31日先までで、それ以前は申し込めない
- 正しい行動は「引っ越し日の31日前になったら申し込む」
- 東京ガスは一律の期限を公表していない。最短当日午後の訪問も可能だが、希望の時間帯は直前だと取れないことがある
- 立会いが必要なのはガスだけ。日程はガスの開栓を軸に組む
- 旧居の停止を忘れると、使っていなくても基本料金がかかる(30A契約で月935円25銭)
- セット割は固定額か率かを見る。一人暮らし(電気+ガスで月1万円程度)では率の割引はほとんど効かない
