一人暮らしを始めたタイミングは、スマホ代を見直す機会です。ただ、乗り換えをためらう理由はたいてい2つに絞られます。「手続きが面倒そう」と「乗り換えた先で電波が入らなかったら困る」。
この2つは、実は制度の側で解決されています。2023年5月24日からMNP予約番号が不要になり、さらに契約から8日以内なら解約できる制度があります。この記事では、まずそこを押さえたうえで、プランの選び方を整理します。
※制度の内容は総務省の公表資料(2026年9月時点)に基づきます。各社のプラン内容・料金は変動するため、契約前に必ず公式サイトでご確認ください。
MNP予約番号は、もう要らない
以前は、乗り換えるときに今の会社へ連絡して「MNP予約番号」を発行してもらう必要がありました。有効期限が15日で、切れたら取り直し——という面倒な手順です。
総務省の携帯電話ポータルサイトによれば、2023年5月24日から「MNPワンストップ」が始まり、乗換え先のWebサイトで申し込むだけで手続きが進むようになりました。公式には「従来のMNP予約番号の発行は不要です」と明記されています。
対応事業者として挙げられているのは、NTTドコモ、au、UQ mobile、povo、ソフトバンク、Y!mobile、LINEMO、楽天モバイル、日本通信SIM、mineo、IIJmio、NUROモバイル、イオンモバイル、BIGLOBEモバイル、J:COM MOBILEなどです。主要なところはほぼ揃っています。
手数料についても、公式にこう書かれています。
「MNP転出手数料はウェブでは無料です。(電話や店舗での申込みは1,100円以下の手数料がかかる場合があります。)」
つまりウェブで手続きすれば転出手数料は0円です。わざわざ店舗に行くと、かえって手数料がかかることになります。
8日以内なら解約できる——「電波が不安」への答え
乗り換え先で電波が入るかどうかは、実際に使ってみないと分かりません。ここを制度が埋めています。
初期契約解除制度は、契約書を受け取ってから8日以内であれば、違約金なしで一方的に解約できる仕組みです。「合わなかったら戻せる」ので、乗り換えのリスクはかなり小さくなります。
ただし完全に無料ではありません。総務省の案内では、解除時に事業者が請求できる実費として次が挙げられています。
- サービス利用料(日割)
- SIMカード発行手数料(概ね3,300円前後)
- 事務手数料(概ね3,300円前後)
- MNP転出手数料(0円または1,100円以下)
合計すると、お試しで8日使って戻す場合でも6,000〜7,000円程度はかかると見ておくのが現実的です。「無料で試せる」ではなく「数千円で保険が買える」と考えてください。
なお、大手3社などが採用している「確認措置」という別の仕組みもあります。こちらは「電波状況が不十分」「説明が不十分」といった限定的な場合に適用され、端末もキャンセルできる点が初期契約解除制度と違います。電波を理由に戻したいなら、こちらが使えないか確認する価値があります。
プランは4種類に分けると整理できる
「格安SIM」とひとくくりにされがちですが、仕組みの違いで4つに分かれます。料金ではなくこの構造を押さえると、自分に合うものが決まります。
| 種類 | 例 | 性格 |
|---|---|---|
| キャリア本体 | ドコモ/au/ソフトバンク | 店舗サポートが手厚い。料金は高め |
| オンライン専用 | ahamo/povo/LINEMO | キャリアと同じ回線。手続きはオンラインのみで、その分安い |
| サブブランド | UQ mobile/Y!mobile | キャリア回線のまま店舗も使える。中間的な位置 |
| MVNO | mineo/IIJmio/日本通信SIMなど | 回線を借りて提供。小容量が安い一方、混雑時間帯に速度が落ちやすい |
判断の軸はこうなります。
- 店舗でサポートを受けたい:サブブランドかキャリア本体
- 回線品質は落としたくないが安くしたい:オンライン専用プラン
- とにかく月額を切り詰めたい/データをあまり使わない:MVNOの小容量プラン
MVNOが安い理由は、キャリアから借りた帯域を多くの利用者で分け合う仕組みだからです。その構造上、昼休みや夕方など利用が集中する時間帯は速度が落ちやすくなります。この時間にスマホで動画を見る習慣があるなら、オンライン専用プランの方が満足度は高くなります。
乗り換えの手順
- 直近3か月のデータ使用量を確認する:今のキャリアのマイページかアプリで見られます。ここを飛ばすと容量選びを間違えます。「なんとなく20GB」で契約して毎月5GBしか使っていない、というのがいちばん多い無駄です。
- 端末の残債とSIMロックを確認する:分割払いが残っていても乗り換えはできますが、支払いは続きます。なお、2021年10月以降に発売された端末は原則SIMロックがかかっていません。
- 乗り換え先のサイトで申し込む:MNPワンストップ対応なら、今の会社に連絡する必要はありません。ウェブで完結させれば転出手数料も無料です。
- 開通を確認する:回線が切り替わったら、自宅と職場・学校など、普段いる場所で電波が入るか確かめます。
- 合わなければ8日以内に判断する:初期契約解除制度の期限は契約書を受け取ってから8日です。試すならこの間に。
解約金は、もう「2年縛りで1万円」ではない
乗り換えをためらう理由として根強いのが解約金ですが、法律が変わっています。総務省の携帯電話ポータルサイトによれば、
- 2019年10月以降の新料金プラン:解約金の上限は1,100円。そもそも違約金の設定がないプランも多い
- 2022年7月1日以降の契約:違約金はサービスの月額料金が上限。主要携帯各社については「1,100円とサービスの月額料金のどちらか低い方」が上限
かつての「2年縛り・解約金9,500円」は過去の制度です。今の契約がいつ結ばれたものかによって、解約金は0円か1,100円程度である可能性が高いということです。「あと半年待たないと違約金がかかる」と思い込んだまま高い料金を払い続けているなら、まず現在の契約条件を確認してください。
ただし2023年末で経過措置が廃止されているため、古い契約のまま自動更新されている場合は条件が変わっていることがあります。マイページで解約金の有無を確認するのが確実です。
乗り換え前に確認する5項目
総務省が乗換えのチェックポイントとして挙げているのは、次のような項目です。スマホ単体で判断すると見落とします。
- セット割引の割引額:自宅のネット回線や電気とのセット割が効いている場合、スマホを他社に移すとその割引も消えます。スマホ代が下がってもネット代が上がることがあるので、合計で比べてください。
- 家族契約を抜けることによる影響:家族割の人数が減ると、家族側の料金が上がることがあります。実家の契約に入ったままなら、抜ける前に確認が要ります。
- 端末の分割払い残債:乗り換えても支払いは続きます。総務省も「支払いが終わるまでの数か月から数年は毎月請求がある」と注意を促しています。
- オプションサービスの契約状況:補償サービスや有料コンテンツが自動で解約されるとは限りません。
- ポイントの失効:キャリアのポイントは、解約で失効することがあります。残高があるなら使い切ってから移る方が無駄になりません。
このうち1と2は、金額のインパクトが大きい割に見落とされやすい項目です。「スマホ代がいくら下がるか」ではなく「世帯の通信費が合計でいくら変わるか」で判断してください。
あわせて見直すと効く項目
スマホ代と自宅のネット回線はセット割の対象になることが多く、片方だけで判断すると総額を見誤ります。
- 一人暮らしのネット回線の選び方:光回線とホームルーターの違い、工事の可否
- 一人暮らしの固定費見直しチェックリスト:通信費以外も含めた優先順位
よくある質問
Q. MNP予約番号はもう不要ですか?
A. ワンストップ対応の事業者どうしなら不要です。総務省は「従来のMNP予約番号の発行は不要です」としています。ただし対応していない事業者との間では、従来どおり予約番号が必要になります。乗り換え先のサイトで「MNPワンストップ」の記載を確認してください。
Q. 乗り換えて電波が入らなかったらどうなりますか?
A. 契約書を受け取ってから8日以内なら、初期契約解除制度で解約できます。ただしSIM発行手数料や事務手数料(それぞれ3,300円前後)は請求されます。大手3社などが採用している「確認措置」に該当すれば、端末もキャンセルできる場合があります。
Q. MNPの手数料はいくらですか?
A. ウェブで手続きすれば無料です。電話や店舗からの申し込みでは1,100円以下の手数料がかかる場合があります。急いでいないなら、ウェブで進めるのが確実です。
Q. MVNOは本当に遅いのですか?
A. 常に遅いわけではありません。キャリアから借りた帯域を共有する仕組みのため、利用が集中する時間帯(昼休みや夕方)に速度が落ちやすいという構造的な特徴があります。その時間に重い通信をしないなら、体感差は小さくなります。
そもそも平均がいくらなのかは一人暮らしの通信費は月いくら?にまとめました。携帯電話通信料の平均は月4,528円で、2021年のピークから14.2%下がっています。家計調査の「通信費」に自宅のネット代が含まれていない点にも触れています。
まとめ
- 2023年5月24日からMNP予約番号は不要。乗換え先のサイトで申し込むだけで進む
- MNP転出手数料はウェブなら無料。電話・店舗だと1,100円以下がかかることがある
- 契約書の受取から8日以内なら解約できる(初期契約解除制度)。ただし実費で6,000〜7,000円程度はかかる
- 電波を理由に戻したいなら「確認措置」も確認する。端末もキャンセルできる場合がある
- プランは「キャリア本体/オンライン専用/サブブランド/MVNO」の4種類で整理する
- MVNOは構造上、混雑時間帯に速度が落ちやすい
- 契約前に、直近3か月のデータ使用量を必ず確認する

