国土交通省の報道発表によると、3月の引越件数は通常月の約2倍です(令和7年2月12日発表)。混雑のピークとして名指しされているのは3月末の土日。
一方で、この記事を書くにあたって調べたところ、月別の引越料金には公的な統計が存在しませんでした。ネット上で見かける「3月の相場は◯◯円」という数字が何なのかも含めて、公的な情報から言えることと言えないことを分けて整理します。
国土交通省が公表している一次情報
国交省は毎年この時期、引越時期の分散を呼びかける報道発表を出しています。令和7年2月12日発表のタイトルがそのまま結論です。
「引越時期の分散に御協力をお願いします!~3月の引越件数は通常月の約2倍!混雑時期を外してスムーズな引越を~」
この発表で示されているのは次の3点です。
- 3月の引越件数は通常月の約2倍
- 依頼が集中するのは3月から4月にかけて
- その中でも3月末の土日が特に混雑する
あわせて、大手引越事業者6社への聞き取りにもとづく月別の引越件数グラフも公表されています(全日本トラック協会によるヒアリング結果、令和6年度)。グラフの形は明快で、3月が突出して高く、次いで4月が高く、残りの10か月はほぼ横ばいです。5月から2月までは、月による差がほとんどありません。
つまり引っ越しの繁忙期は「春」ではなく、ほぼ3月一点に集中していると考えた方が実態に近いことになります。
「3月の相場は◯◯円」という数字の出どころ
ここからが、この記事で一番伝えたい部分です。
引っ越し料金を調べると、月別の相場表がいくつも出てきます。それらの根拠を確かめるため、政府統計を探しました。結果はこうです。
- 小売物価統計調査(毎月の価格を調べている調査)の調査品目872件を確認したところ、引越運送料は含まれていませんでした。宅配便の運送料は品目にありますが、引越料金はありません
- 政府統計ポータル(e-Stat)のデータベースを「引越料」で検索しても、該当は0件でした
つまり月別の引越料金の公的な平均額は、公表されていません。
では相場表の数字は何かというと、引越会社や一括見積もりサイトが自社で集計したデータです。自社に見積もり依頼が来た案件の平均を出しているので、数字そのものは実在します。
ただし、次のような性質があります。
- その会社に依頼した人の平均であって、全国の平均ではありません
- 会社によって顧客層も対応エリアも違うので、サイトごとに数字が食い違います
- 集計の対象期間や、荷物量・距離の条件が明示されていないことが多くあります
自社集計が悪いという話ではありません。他に数字がない以上、参考にする価値はあります。ただ公的統計と同じ重みで扱ってはいけない、ということです。相場表を見て「3月は◯万円が普通なのか」と基準にしてしまうと、判断を誤ります。
では、公的な情報から何が言えるのか
1. 需要が2倍になるという事実
件数が通常月の約2倍というのは、需要が2倍になるということです。一方で、トラックの台数も作業員の人数も、3月だけ2倍に増やすことはできません。需要と供給の差が開けば、価格が上がり、予約が取りにくくなります。これは相場表がなくても成り立つ話です。
2. 国交省が載せている利用者の声
同じ報道発表には、ピークを外した人の声が載っています。
- 「3月末の土日の引越と比べて、引越代金が安くなった」
- 「予約が取りやすくなった」
金額は書かれていないので定量的な根拠にはなりませんが、公的機関が公表している一次情報です。「ピークを外すと安くなる」という方向性については、国が自ら発信していることになります。
時期をずらせない人がやれること
4月入社や4月入学が理由なら、3月から動かせません。その前提で、できることを混雑の情報から整理します。
3月末の土日を外す
国交省が名指しで最混雑としているのがここです。同じ3月でも、上旬・中旬なら状況が違います。月の中でずらすだけでも意味があります。
平日を選ぶ
土日に集中するので、平日の方が空きます。有給を1日使えるなら、選択肢に入れる価値があります。
時間帯を指定しない
引越会社は一般に、午前便・午後便・時間指定なし(フリー便)といった区分を設けており、時間の融通が利くほど安くなる料金体系になっています。ただしこれは各社の料金体系の話で、公的統計にもとづく数字ではありません。実際にいくら違うかは、見積もりを取って比べてください。
早く動く
繁忙期は予約枠が先に埋まります。金額を比べる以前に、選べる会社が減ります。
そもそも会社をどう選ぶかは一人暮らしの引っ越し業者の選び方にまとめています。
実は、時期より金額が大きいものがある
ここまで時期の話をしてきましたが、一人暮らしの引っ越しでもっと金額が大きく、しかも一度きりしか選べないものがあります。
物件のガス種別です。
同じ熱量を使ったとき、プロパンガスは都市ガスの約2倍かかります。年間でおよそ31,000円の差です。そして賃貸の場合、入居者はガス会社を選べません。決まるのは物件を選ぶ瞬間だけです。
引っ越し料金をピーク回避で数万円安くできたとしても、それは1回きりです。ガス種別の差は住んでいる間ずっと、毎月効き続けます。2年住めば6万円、4年住めば12万円の差になります。
しかもこの差は均等には出ません。冬は必要な熱量そのものが増えるので、差は冬に偏って現れます。
- ガス種別の見分け方と計算の根拠:一人暮らしのガス代は月いくら?都市ガスとプロパンで2倍違う理由
- 冬に差が開く仕組み:一人暮らしの冬のガス代は月いくら?夏の1.79倍になる理由
物件情報の「ガス」欄を見るのは無料で、時間も5秒です。引っ越しの節約で費用対効果が一番高いのは、おそらくここです。
引っ越しが決まったあとの手続き
時期と物件が決まったら、ライフラインの手続きが残ります。順番と期限は引っ越しのライフライン手続き、やる順番と期限に、当日の立ち会いが要るものと要らないものは引っ越しで立ち会いが必要な手続きにまとめています。繁忙期は連絡が取りにくくなるので、通常月より早めに動いてください。
よくある質問
Q. 引っ越しの繁忙期は具体的にいつですか。
A. 国土交通省の公表では、3月から4月にかけて依頼が集中し、3月の件数は通常月の約2倍です。大手6社の月別件数を見ると3月が突出し、次いで4月。5月から2月まではほぼ横ばいで、月による差はほとんどありません。
Q. 3月は本当に料金が高いのですか。
A. 月別料金の公的統計は存在しないため、「何円高い」と公的な根拠をもって言うことはできません。ただし件数が約2倍になる一方で車両と人員はすぐに増やせないこと、国交省がピークを外した利用者の「引越代金が安くなった」という声を公表していることから、方向としては高くなると考えるのが妥当です。
Q. ネットの相場表は信用できませんか。
A. 数字自体は実在しますが、引越会社や一括見積もりサイトの自社集計です。その会社に依頼した人の平均であって全国平均ではなく、サイトごとに数字も食い違います。参考にはなりますが、公的統計と同じ扱いはしない方が安全です。
Q. 4月入社なので3月から動かせません。
A. 月の中でずらしてください。国交省が最混雑として名指ししているのは3月末の土日なので、上旬・中旬、あるいは平日にするだけでも状況が変わります。予約枠自体が埋まるので、早く動くことも効きます。
Q. 引っ越しで一番節約になるのは何ですか。
A. 一人暮らしなら、物件のガス種別を確認することだと考えています。プロパンと都市ガスでは年間約31,000円の差があり、賃貸では入居後に変更できません。引っ越し料金の節約は1回きりですが、こちらは住んでいる間ずっと続きます。
まとめ
- 国土交通省の公表では、3月の引越件数は通常月の約2倍。集中するのは3月〜4月で、最も混むのは3月末の土日
- 大手6社の月別件数は3月が突出、次いで4月。残る10か月はほぼ横ばいで、繁忙期は実質3月に一点集中している
- 月別の引越料金には公的統計が存在しない。小売物価統計調査の872品目にも含まれず、e-Statの検索も0件だった
- ネットの相場表は引越会社や見積もりサイトの自社集計。参考にはなるが、公的な平均ではない
- 時期をずらせないなら、3月末の土日を外す・平日にする・時間帯を指定しない・早く動く
- 一人暮らしの引っ越しで金額が一番大きいのは、おそらく物件のガス種別。年約31,000円の差が、住んでいる間ずっと続く
出典は、国土交通省「引越時期の分散に御協力をお願いします!」(令和7年2月12日 報道発表)、同省が公表する令和6年度の大手引越事業者6社の月別引越件数(公益社団法人全日本トラック協会によるヒアリング結果)、総務省統計局「小売物価統計調査(動向編)」の調査品目一覧および政府統計ポータルe-Statの検索結果です。引越件数のグラフには数値ラベルが付されていないため、本文では形状の説明にとどめ、具体的な件数は記載していません。

